休職期間満了と復職について(私傷病による休職期間満了時の取扱い)
大阪府HP「「労働相談のポイント」35 休職期間満了と復職」より
1 私傷病による休職期間満了時の取扱い
私傷病による休職は、労働者が私的な事由により傷病にかかり、その療養のため相当期間にわたり労務を提供できずに会社を休む場合に、使用者が当該労働者について一定期間の就労を免除し、復職可能か否かを見極めることを目的とする任意の制度であり、「解雇の猶予措置」としての性質も有するとされている。
休職期間が終了しても傷病が回復せず就労できない場合には、労働契約の債務の本旨に従った労務の提供の不履行となり、就業規則に基づき、自然(自動)退職の取扱いとなるが、会社によっては解雇とされる場合もあり、その場合には就業規則に解雇事由として「休職期間の満了」を明記するとともに、解雇予告などの法に基づく手続きが必要となる。
通達においても、業務によらない負傷又は疾病のため連続して欠勤した日数が一定期間を超えた場合等に解雇する旨の労働協約の規定について、「労働協約が「会社は・・・解雇する」と規定している点よりみると、(略)「期間を超えたとき」における労働契約の終了は労働基準法第20条における解雇であると考えられ、同法所定の解雇の予告をしなければならない」(昭和27.7.25 基収1628号)とされている。
なお、自然退職の規定については、「休職期間満了時になお、休職事由が消滅していない場合に。期間満了によって当然に復職となったと解した上で、改めて使用者が当該従業員を解雇するという迂遠の手続きを回避するものとして合理性を有する」との判例(エール・フランス事件 東京地判 昭59.1.27)がある。
労働者は、休職期間満了時に復職できなければ退職という大きな不利益を甘受せざるを得ないため、使用者は休職期間満了時の復職について一定の配慮を行うべきとされており、復職させるか否かの判断に当たっては、本人との面談を行い、回復の度合いや今後の回復見込みをもとに、主治医や産業医の意見を聴くなどし、必要に応じて段階的に復帰させることや、本人の意向を踏まえた上での業種や業務の転換、業務の軽減措置を検討するなど、慎重に判断しなければならない。
なお、私傷病からの回復が不完全であり一部の労務しか提供できない場合に復帰を認めるか否かが問題となるが、現場監督はできないが事務作業なら可能と申し出たことことに対し、債務の本旨に沿わないとして使用者が自宅治療命令を出して労務の受領を拒否したことの是非が争われた事案において、「職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である」とされ、使用者は他に配置できる業務があるか検討し「債務の本旨に従った履行の提供」の有無を判断した上でなければ、その受領を拒否できないとされた判例(片山組事件 最一小判 平10.4.9)で判断の枠組みが示された。
なお、復職時に職務内容を変更できるかについて、休職前の職務を遂行できるまでに回復しているとは言えない場合には、客観的に当該労働者が遂行可能と思われる他の職務を提示した上で復職を命じることも許容される。休職前の職務を遂行できる程度に回復していると認められる場合に職務変更を行うことも、その配転命令が権利の濫用と評価されるような場合を除けば認められると解される。ただし、いずれの場合においても、主治医から休職前の職務での復職が望ましい旨の意見が出されている場合には、その意見に従わないことにつき相当の理由が求められる。
上記の事例の方はメンバーシップ型の雇用形態だったので他の職務に配置転換ができたとすると、ジョブ型の雇用形態だった場合はどうだったのだろうか?(職務:現場監督として採用されていた場合)
関連情報 令和5年度労使関係セミナー「ジョブ型雇用に関連する法的な枠組み」中央労働委員会東日本区域地方調整委員会議委員長 千葉大学大学院社会科学研究員 皆川 宏之
厚生労働省サイト内検索より(5解雇 ⑴整理解雇⑵能力不足を理由とする解雇)