民法改正②(遺産分割等に関する見直し)
●配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示推定規定) 2019年7月1日施行
婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定し、被相続人の被相続人の意思を尊重した遺産分割ができるようになります。
※現行制度では、贈与等を行ったとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等がなかった場合と同じになり、被相続人が贈与等を行なった趣旨が遺産分割の結果に反映されていません。被相続人の意思の推定規定を設けることにより、配偶者は、より多くの財産を取得することができるようになります。
●遺産分割前の払戻し制度の創設等 2019年7月1日施行
相続された預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう遺産分割前にも払戻しが受けられる制度が新設されます。
※現行制度では遺産分割が終了するまでの間は被相続人の預金の払戻しができませんでしたが2つの制度が設けられます。
⑴預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融期間の窓口において支払いが受けられるようになります。
(相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)=単独で払戻しをすることができる額
⑵預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件が緩和されます。(家事事件手続法の改正)
●遺産の分割前に遺産に属する財産を処分して場合の遺産の範囲 2019年7月1日施行
相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策が設けられます。
※現行制度では、特別受益のある相続人が、遺産分割前に遺産を処分した場合に、不公平な結果が生じましたが、法律上規定を設け、処分者以外の相続人の同意があれば、処分者の同意を得ることなく、処分された預貯金を遺産分割の対象に含めることを可能とし、不当な出金がなかった場合と同じ結果を実現できるようになります。