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「公的年金財政状況報告」令和5(2023)年度」について

ポイント

「公的年金財政状況報告」は、社会保障審議会年金数理部会が、公的年金の毎年度の財政状況について、公的年金の各制度・各実施機関からの報告に基づき、専門的な観点から横断的に分析・評価を行なった結果を取りまとめたもの。

1 公的年金の収支状況

公的年金制度全体でみると、令和5(2023)年度は、運用損益分を除いた収入総額54.4兆円、支出総額54.5兆円であったことから、運用損益分を除いた単年度収支残は0.1兆円のマイナス。また、時価ベースの運用損益は53.6兆円のプラス。その結果、時価ベースの年度末積立金は前年度に比べ53.5兆円増加し、304.0兆円。

2 公的年金の財政状況の評価

令和5(2023)年度までの実績と令和元(2019)年財政検証の前提や将来見通しを比較するだけではなく、長期的な財政の均衡の観点から評価。

⚪︎国民年金第1号被保険者数は財政検証の見通しを下回り、厚生年金被保険者数は上回る状況が続いていること、令和5(2023)年度は高い運用収益となった結果、積立金の実績が将来見通しを上回っていること、令和5(2023)年における65歳の平均余命は、平成29(2017)年推計(注)における死亡高位の仮定値を下回っていることが確認された。また、令和5(2023)年度は、マクロ経済スライドによる給付水準調整が行われたことにより、年金財政にプラスの効果をもたらしたことに加えて、実質賃金の伸びがプラスになったことにより、平成12(2000)年改正で既裁定年金の物価スライドが導入されて以降初めて、賃金の伸びが既裁定年金の伸びを上回ったことが確認された。

⚪︎一方で、令和元(2019)年以降の合計特殊出生率は、平成29(2017)年推計における出生中位の仮定値を下回る水準で推移し、令和5(2023)年は、出生低位の仮定値を下回っていること、また、実質賃金上昇率(対物価)は令和元(2019)年財政検証におけるいずれのケースの前提も下回っていることが確認された。

⚪︎これらの将来見通しからの乖離が、一時的なものではなく中長期的に続いた場合には、年金財政に与える影響は大きなものとなる。たとえば、合計特殊出生率が将来推計人口の出生中位の仮定値を下回って推移する傾向が今後も長期にわたって続けば、将来の年金制度の運営は大きな影響を受ける。

⚪︎年金財政の観点からは、人口要素、経済要素等いずれも短期的な動向にとらわれることなく、長期的な観点から財政状況の動向を注視すべきである。

 

(注)新たな将来推計人口(令和5年推計)が公表されているが、ここでは、令和元(2019)年財政検証の基礎となった平成29(2017)年推計における仮定値と比較している。