高額療養費の在り方について(案)
高額療養費については、昨年末に閣議決定された「改革工程」に「高額療養費の自己負担限度額の見直し」が盛り込まれており、また、11月15日に開催された「全世代型社会保障構築会議」においても、複数の委員から、年齢ではなく負担能力 に応じた負担という全世代型社会保障の理念や、保険料負担の軽減等といった観点から、見直しを早急に求める意見があった。このことを踏まえ、以下の視点を勘案しつつ、必要な見直しを検討していくべきではないか。
社会経済情勢の変化
・高齢化の進展、医療の高度化等により高額療養費の総額が年々増加(総医療費の6〜7%相当)する中で、近年、高額療養費の自己負担限度額の上限は実質的に維持されてきた。このような要因もあり、医療保険制度における実効給付率は上昇。
・他方で、前回実質的な見直しを行った約10年前(平成27年)と比較すると、賃上げの実現等を通じた世帯主収入や世帯収入の増加など、経済環境も大きく変化している。また、足下では、生活必需品をはじめとした継続的な物価上昇が続く中で、現役世代を中心に保険料負担の軽減を求める声も多くある。
検討の方向性
・このように、物価・賃金の上昇など経済環境が変化する中でも、高額療養費の自己負担限度額の上限が実質的に維持されてきたこと等を踏まえ、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方も含めた全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、①高額療養費の自己負担限度額を見直し(一定程度の引き上げ)、②所得区分に応じたきめ細かい制度設計とする観点からの所得区分の細分化などが考えられないか。
・その際、能力に応じて全世代が支え合う全世代型社会保障を構築する観点から負担能力に応じた負担を求める仕組みとすべきではないか。
・施行時期については、国民への周知、保険者・自治体の準備期間(システム改修等)などを考慮しつつ、被保険者の保険料負担の軽減というメリットをできる限り早期に享受できるようにする観点から検討すべきではないか。
※高額療養費制度の概要
⚫︎高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払っていただいた後、月ごとの自己負担限度額を超える部分について、事後的に保険者から償還払い(※)される制度。
※1 入院の場合、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる現物給付化の仕組みを導入
※2 外来でも、平成24年4月から、同一医療機関で自己負担限度額を超える場合に現物給付化を導入
⚫︎自己負担限度額は被保険者の所得に応じて設定される。
令和6年11月21日 第186回社会保障審議会医療保険部会 資料2より