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賃貸借終了時のルールについて

⚪︎賃借人の原状回復義務及び収去義務等の明確化

事例:Aさんは、Bさんから借りていた家を退去することになったが、Bさんから、日焼けしたクロスの張替費用まで負担するように求められた。Aさんとしては、クロスの張替費用まで負担することには納得できない。

賃貸借契約が終了した場合には、賃借人は、賃借物を現状(元の状態)に戻して賃貸人に返還しなければならないと解されています。また、この原状回復義務の範囲について、一般に、通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)及び経年変化はその対象に含まれていないと解されています。しかし、これらのルールは改正前の民法の文言上は明確ではありませんでした。

改正後の民法では、賃借人は、賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負うこと、しかし、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないことを明記しました。

 

※通常損耗・経年変化に当たる例

・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡 ・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ) ・地震で破損したガラス ・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)

※通常損耗・経年変化に当たらない例

・引っ越し作業で生じたひっかきキズ ・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備等の毀損

・タバコのヤニ・臭い ・飼育ペットによる柱等のキズ・臭い

 

⚪︎敷金に関するルールの明確化

事例:Aさんは、Bさんから家を借りた際に「保証金」という名目で賃料債務等の担保として金銭を差し入れていた。賃貸借契約が終了し、Aさんはこの家を退去したが、賃料の未払等はないのに、Bさんは差し入れた金銭を返還してくれない。

敷金とは、賃貸借に基づいて賃借人が負うことになる金銭債務(賃料債務など)を担保するため賃借人が賃貸人に交付する金銭のことです。建物等の賃貸借に当たっては敷金が授受されるのが一般的ですが、改正前の民法では、敷金の定義や敷金返還請求権の発生時期についての規定はありませんでした。

改正後の民法では、これまでの実務に従い、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。

その上で、判例に従い、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債務が生じること、その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であることなどのルールを明確化しています。

 

法務省「2020年4月1日から賃貸借契約に関する民法のルールが変わります」パンフレットより

 

参考 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」