約款(定形約款)を用いた取引について
現代の社会では、不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者などがあらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき、この約款に基づいて契約を締結することが少なくありません。
このような約款を用いた取引においては、顧客はその詳細な内容を確認しないまま契約を締結することが通例となっています。しかし、民法には約款を用いた取引に関する基本的なルールが何も定められていませんでした。今回の改正では、このような実情を踏まえ、新たに、「定形約款」に関して、次のようなルールを新しく定めています。
⑴定形約款が契約の内容となる要件
顧客が定形約款にどのような条項が含まれるのかを認識しなくても、①当事者の間で定形約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや、②定形約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは、個別の条項について合意をしたものとみなされます。他方で、信義則に反して顧客の利益を一方的に害する不当な条項はその効果が認められません。
⑵定形約款の変更の要件
現在の実務では、事業者が既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更することがあります。今回の改正では、定形約款の変更がどのような要件の下で可能なのかについて新たにルールを設けています。
定形約款の変更は、①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や、②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限って認められます。顧客にとって必ずしも利益にならない変更については、事前にインターネットなどで周知をすることが必要です。
※変更が合理的であるかどうかを判断する際には、変更の必要性、変更後の内容の相当性、変更を予定する旨の契約条項の有無やその内容、顧客に与える影響やその影響を軽減する措置の有無などが考慮されます。
※約款中に「当社都合で変更することがあります」と記載してあっても、一方的に変更ができるわけではありません。
法務省「民法(債権法)改正2020年4月1日から債権法(民法の契約等に関する部分)が変わります」パンフレットより