令和6年版 男女共同参画白書 特集 仕事と健康の両立②
第1節 社会構造の変化と男女で異なる健康課題
・男性特有の病気は50代以降で多くなる傾向にあるが、女性特有の病気は20代から50代の働く世代に多い。
・日本型雇用慣行が形成された昭和時代と現代では、人口構造・就業者の構成が変化。
・女性就業者が増加する一方、就業者全体が高齢化。また、非就業の高齢者も増加。
・一人一人が希望に応じて、自らの個性と能力を発揮するために、健康維持・増進が重要な課題。
・女性の正規雇用比率は、20代後半をピークに年代が上がるとともに低下するL字カーブを描く。
・出生コーホートで世代による変化をみると、近年は、出産・育児によるとみられる女性の正規雇用比率の低下幅は縮小しており、今後も女性の正規雇用比率の高まりが期待される。
・近年、未就学児の育児をする者及び家族の介護をする者に占める有業者の割合が上昇。
・育児・介護ともに、依然として担い手は、男性よりも女性の方が多い。
第2節 仕事、家事、育児等と健康課題の両立
・気になる症状への対処法として「休暇・休憩をとる」「市販の薬やサプリメント等を飲む」「病院等に行く」を挙げる割合が高いが、「特に対処していない」とする割合も3〜4割。
・子育て中の正規雇用労働者の女性は「仕事や家事・育児等で忙しく病院等に行く時間がない」「病院が空いている時間に行けない」ため、気になる症状に十分に対処できていないことが多い。
・気になる症状があったときのプレゼンティーイズム※損失割合は、仕事よりも家事等の方が高い。健康課題を抱えていると、仕事よりも家事・育児等に影響が及ぶと認識していることがうかがえる。
・小学生以下の子供と同居している有業の女性は、仕事と家事等のプレゼンティーイズム損失割合が同程度となっており、健康課題により仕事にも家事・育児等にも影響が及ぶと自身で認識していると推測されるため、両立支援が重要。
※プレゼンティーイズムとは、何らかの不調を抱えた状態で出社し本来のパフォーマンスが発揮できない状態を指し、出来がどの程度か(生産性)をアンケートによる自己評価等を用いて測定する。なおここでは、家事・育児・介護についても、体調不良を抱えた状態での出来(生産性)という意味で用いている。
・月経のある女性の8割が月経不調により生活(仕事や家事・育児・介護)への「支障がある」。特に20代・30代女性では9割が生活への支障があり、うち4割は「かなり支障がある」。
・更年期障害の自覚のある女性の9割、男性の6割が、生活への「支障があると思う」。
・職場において。月経に関して困った経験については、「経血の漏れが心配で業務に集中できない」「生理用品を交換するタイミングを作りにくい」「立ち仕事や体を動かす業務で困難を感じる」「生理休暇を利用しにくい」を挙げる割合が高い。
・更年期障害に関わる症状への対処法をみると、女性では市販薬等の服用の割合が最も高い。
・一方で、男性の7割、女性の5割は特に対処していない。
・男女ともに健康意識が高い方が、昇進意欲が高い傾向。
・男女ともに最も気になる症状に対処できているとする方が、昇進意欲が高い傾向。
・企業規模にかかわらず、勤務先が健康経営※に取り組んでいる方が、体調が悪い日の頻度が低い。
・健康経営により、プレゼンティーイズム年間損失日数を年間4〜7日程度減らすことができ、女性の方が減少日数も多い。
※健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。経済産業省の健康経営度調査では、任意健診・検診の受診勧奨や受診率向上のための取組、従業員等の健康意識向上のための教育の実施、女性特有の健康課題に対する取組等を調査している。
・20〜39歳女性では、「生理休暇を取得しやすい環境」「出産・子育てと仕事の両立支援」、40〜69歳女性では、「病気の治療と仕事の両立支援」「更年期障害支援」「介護と仕事の両立支援」を職場に求める割合が高い。
・男性は年代にかかわらず、経営陣・トップ、男性上司、男性社員の理解を挙げる割合が高い。
第3節 両立支援は新たなステージへ
・管理職として働く条件として、男女、年代を問わず「管理職でもきちんと休暇がとれること」の割合が最も高い。
・20〜39歳女性では「出産・子育てとの両立支援」「育休等によってキャリアが中断されない体制・配慮」「育児等を配偶者と分担できること」が、40〜69歳女性及び男性に比べて高い。
・人生100年時代において、男女ともに自らが健康であり、自らの能力を発揮できる環境が重要。
・少子高齢化の進展の中で、労働力の確保・労働生産性の向上のためにも健康支援は必要不可欠。
・これらが、持続可能な形で自らの理想とする生き方と仕事の両立を可能にする要素になり得る。
(補足)家族の姿の変化
・人生100年時代を迎え、我が国における家族の姿は変化し、人生は多様化。
・昭和60(1985)年には全世帯の4割を占めていた「夫婦と子供」の世帯は、令和2(2020)年時点では全体の25%となり、単独世帯のひとり親世帯が全体の約半数を占めるようになった。
(補足)正規雇用比率(L字カーブ)の推移
・女性の正規雇用比率は、20代後半をピークに、年代が上がるとともに低下するL字カーブを描いている。
・一方、近年、20代から40代を中心に女性の正規雇用比率が上昇している。