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ESRI Discussion Paper No.384「女性の労働供給と人口構造の変化が経済・財政に及ぼす影響:一般均衡型世代重複モデルによる分析」

論文は、すべて研究者個人の責任で執筆されており、内閣府経済社会総合研究所の見解を示すものではありません。 2023年9月 北尾早霧、中国泰人、御子柴みなも

要旨

本研究では、日本における高齢化がマクロ経済と財政に与える影響を、世代重複型の一般均衡モデルを用いて数量分析する。同枠組みに個人の性別や婚姻状態などの要素を組み込むことで、異質な個人の経済状態がマクロ経済や財政指標に与える影響を考慮する。さらに、人口構成の変化に加えて年金・医療・介護給付を織りこむなど、政府部門における制度の詳細な分析も取り入れる。

2023年の国立社会保障・人口問題研究所の長期人口推計を基にしたベースラインモデルによれば、総労働供給は2020年から2050年にかけて約35%減少すると見込まれる。また、寿命の延伸により、総貯蓄は一時的に増加するが、その後減少に転じる。年金・医療・介護保険支出が増加し続けることで、現行制度を維持するために必要な税負担が増加し、2060年代には一人当たり60万円超の追加的税負担が必要となる。労働市場に目を向けると、女性の就業率と年収は男性より低く、特に既婚女性の平均年収が顕著に低いことがわかる。もし、既婚女性が単身女性と同等の収入を得る場合、2050年の総労働供給はベースラインと比較して約8%増加し、税負担も一人当たり6万円程度抑制されるとの試算結果が得られた。女性の所得が男性の水準に近づくと、さらに大きな効果が期待できる。男女ともに50代半ば以降は就業率・年収ともに大きく減少するが、この減少を抑制することで同様の効果が期待できる。出生率の上昇や低下によるマクロ経済や財政への影響は短期的に見ると小さいが、高齢者比率がピークに達する2060年代以降には大きな効果をもたらすことが示唆された。

 

全文は内閣府HPから閲覧できます。