受診率向上施策ハンドブック(第2版)について 「ナッジ(nudge)」
がん検診対象者に対して、ただ説明するのではなく、「行動に至るきっかけの提供」を目的とした、より効果的な取り組みとして、行動経済学の「ナッジ(nudge)(※)理論」に基づいた好事例を紹介するものです。
(※)nudge:(訳)ひじで軽く突く。(行動経済学上)対象者に選択の余地を残しながらも、より良い方向に誘導する手法。
ナッジ理論で伸ばす日本の健康寿命〜受診に行かない人の心理的バイアスを理解する〜
日本のがん検診受診率は様々な取組や活動の結果、改善傾向にありますが、それでもまだ過半数が「検診を受けて自分の健康状態を確認する」という正しい行動にむかえていません。検診に行かない理由は様々ですが、「忘れていた」とか、「受けたいと思っていたけどそのままになっていた」などちょっと後押ししてあげれば行動が変わった人も多いのです。「面倒だ」とか「後で考えよう」となってしまう背景には人の持つ心理的バイアスがあることが行動経済学によって解明されています。心理的バイアスは無意識な状態で本能的に発生し、直感的に疲れない道を選ばせてしまうのです。この心理的バイアスに着目した新しいアプローチで行動変容を促すのが、ナッジ理論を利用した受診勧奨です。
受診対象者に限らず、私たちには毎日無意識にこなしている行動があります。朝起きて、歯を磨いて、洋服を着替えて、仕事をしたり、買い物をしたり、帰宅後はテレビを見たり入浴したり。平日と休日は異なりますが、人にはそれぞれ生活のルーティンがあります。ルーティンに沿って日々を過ごすことを人は無意識に快適だと感じています。目の前の満足を得るために、将来の満足のための、ダイエットや健康管理、勉強などは後回しになりがちです。そのような後回しの行動のうちの一つに健康診断やがん検診の受診があるのです。受診率を改善するために、受診という正しい行動を選べない人の心理的バイアスを理解しましょう。
厚生労働省「受診率向上施策ハンドブック(第2版)について」2019年4月