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「働きがい」について(労働経済の分析)

令和元年版 労働経済の分析 第Ⅱ部第3章

・本白書では、働く人の「働きがい」について「ワーク・エンゲイジメント」という概念を用いて分析。

・「ワーク・エンゲイジメント」は、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される。

・ワーク・エンゲイジメントは、バーンアウト(燃え尽き)の対極の概念となっている。

 

正社員の「働きがい」の概況

・「働きがい」を示すワーク・エンゲイジメント・スコア(以下、「WEスコア」という。)をみると、正社員全体では3.42となっており、「熱意」が3.92と高い一方で、「活力」が2.78と低くなっている。性別でみると、女性はスコアがやや高く、「活力」が男性より低いが、「熱意」「没頭」が男性より高い。また、年齢別にみると、若い社員のスコアが低い傾向にある。さらに、職位・職責が高くなるほど、スコアは高くなっていく傾向にある。

・正社員と限定正社員を比べると、限定正社員の「働きがい」は相対的には高い可能性が示唆された。

非正規雇用労働者の「働きがい」の概況

・非正規雇用に就いた理由によって、「働きがい」には大きな差が生じている。正規雇用と比較すると、不本意選択の方では、労働者派遣事業所の派遣社員や契約社員・嘱託、男性、35〜44歳を中心とした「働きがい」の高い状態の方の割合が低い水準となっているが、大多数を占める不本意選択以外の方では、同割合が高い水準となっている。

「働きがい」と定着率・離職率

・新入社員の定着率(入社3年後)の上昇や従業員の離職率の低下は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

・人手不足企業においてもこうした傾向がみられ、従業員の働きがいが高い場合、人手不足企業であっても定着率が上昇している企業や離職率が低下している企業が多い。

「働きがい」と労働生産性

・個人の労働生産性の向上は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

・企業の労働生産性(マンアワーベース)の水準は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

「働きがい」と自発性・積極性・顧客満足度

・仕事に対する自発性や他の従業員に対する積極的な支援(役割外のパフォーマンス)は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

・企業が認識する顧客満足度に関するD.I.との関係をみると働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

「働きがい」とストレス・疲労

・仕事中の過度なストレスや疲労は、働きがいと負の相関関係があることがうかがえる。一方で、ワーカホリックな状態は、働きがいと正の相関関係があることがうかがえる。

・働き方のストレス・疲労を軽減するためには、働きがいの向上が重要であることが示唆されるが、働きがいとワーカホリックな状態とは弱い正の相関が確認される。したがって、企業は、ワーカホリックな労働者を称えるような職場環境を見直す等、働き方をめぐる企業風土の在り方についても検討していく必要がある。

「働きがい」と職業人生の長さに関する所感

・「職業人生は長過ぎない方が望ましい」と考える者が約12.6%である一方で、「職業人生は可能な限り長い方が望ましい」と考える者が約63.0%となっており、後者の割合が高い。

・いずれの年齢階級においても、働きがいが低い者と比較し、働きがいが高い者では、「職業人生は可能な限り長い方が望ましい」と感じる労働者が多い。

「働きがい」の高い労働者の主な仕事に対する認識

・「仕事を通じて、成長できている」「自己効力感(仕事への自信)が高い」「勤め先企業でどのようにキャリアを築いていくか、キャリア展望が明確になっている」等の認識を持つ頻度の高さは、働きがいと正の相関がある可能性が推察される。

「働きがい」の高い者の勤め先企業で実施されている雇用管理

・雇用管理については、「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」「業務遂行に伴う裁量権の拡大」等を実施することにより、労働者の働きがいが向上する可能性が推察される。

「働きがい」の高い者の勤め先企業で実施されている人材育成

・人材育成については、「指導役や教育係の配置(メンター制度等)」「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」「企業としての人材育成方針・計画の策定」等を実施することにより、労働者の働きがいが向上する可能性が推察される。

 

 

※2022年度 雇用政策研究会「議論の整理」

玄田有史・萩原牧子編『仕事から見た「2020年」結局、働き方は変わらなかったのか?』(慶應義塾大学出版会)第4章では、コロナ禍の2020年のワーク・エンゲージメントが前年に比べて低下していたことが指摘されている。なお、令和4年度第2回雇用政策研究会資料5(山本委員プレゼン資料)において、在宅勤務を開始した人・在宅勤務日数が増えた人ほどワークエンゲイジメントが高いとの指摘がなされていることに留意されたい。