ブログ

ブログ

移行期医療の現状と課題②

2 移行期医療における課題

1のような現状を踏まえると、移行期医療における課題には、大きく分けて、医療体制と患者自律(自立)支援の2つの側面があり、具体的にはそれぞれ以下のような課題が考えられる。

⑴医療体制の課題

・一部の診療科や医療機関間においては、小児期の診療科・医療機関と成人期の診療科・医療機関の連携が円滑に行われている場合もあるが、全体としては、十分な連携がなされているとはいえない状況にある。

・小児診療科の医師のみによる成人期医療の提供は、診療内容が不十分になる可能性がある。

・小児慢性特定疾病の患者の診療について、成人診療科の医師が必要な知識や臨床経験を積む機会が現状では限られている。

・遺伝性の有無に関わらず、小児慢性特定疾病の患者の妊娠・出産に関して、小児期、成人期の医療従事者ともに、経験・知識が現状では限られている。

・知的・発達障害を伴う小児慢性特定疾病の患者の診療には、障害に関する知識や対応のスキルが求められるが、成人診療科の医療現場での対応は現状では十分とはいえない。

・成人診療科は小児診療科と異なり専門ごとに分化していることが多いため、患者によっては複数の診療科を受診する必要がある。

⑵患者自律(自立)支援の課題

・移行期医療を円滑に進めるためには、患者の自律(自律)性を育て、病気への理解を深めることなどにより、医療を患者自身の意思で決定できるようになることが必要であるが、医療従事者の理解や知識・経験が不足していたり、小児慢性特定疾病の患者を支援する体制が十分に構築されていない。

・小児診療科から転科してきた小児慢性特定疾病の患者とその家族から、長期の療養に伴う学業・就労と治療の両立等に関する相談支援を求められたとしても、成人期医療では必ずしも十分に対応できないために、患者・家族・医療者の三者がともに戸惑うことが少なからずあり、円滑な医療の提供に支障を来す場合が懸念される。