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移行期医療の現状と課題

健難発1025第1号

平成29年10月25日

都道府県における小児慢性特定疾病の患者に対する移行期医療支援体制の構築について

都道府県における小児慢性特定疾病の患者に対する移行期医療支援体制の構築に係るガイド

1 移行期支援の現状

近年の治療法の開発や治療体制の整備等により、小児期に慢性疾病に罹患した患者全体の死亡率は、この30年間で約1/3に減少し、多くの子ども達の命が救われるようになった。その一方で、原疾患の治療や合併症への対応が長期化し、それらを抱えたまま、思春期、さらには成人期を迎える患者が多くなってきている。このような患者については、原疾患や合併症の病態が加齢とともに変化し、さらに、新たな合併症が加わることなどにより、原疾患由来の病態生理とは異なる「成人期の病態生理」が形成されていくという特徴がある。

こうした小児期から成人期への移行期にある慢性疾病の患者、特に小児慢性特定疾病(児童福祉法第六条の二第一項に定める小児慢性特定疾病をいう。以下同じ。)の患者に対して、現状では小児期医療・成人期医療の双方において、必ずしも適切な医療を提供できていないことが指摘されている。例えば、成人期に発症する生活習慣病や心血管疾患、悪性腫瘍などは小児診療科のみで適切な医療を提供できるか懸念がある一方で、成人診療科の医師にとっては、小児慢性特定疾病の多くは非常に馴染みの薄い領域である場合も想定される。

また、移行期は、小児から成人に向かって自立の準備を整えていく重要な時期であり、小児慢性特定疾病の患者にとっては、この時期に自身の疾病を理解し、自己決定をするための準備を整えることにより、成人期医療への円滑な移行が促進されることが期待される。しかしながら、現状においては、小児期医療では、どちらかと言えば「患者本人」でなく「患者の保護者」の意向を中心にして医療が提供される傾向にあり、自力で身を立てる「自立性」とともに、疾病の治療方針に対して自己決定する「自律性」を育てるための支援が十分になされていない場合が多く、成人期医療の場で円滑な医療の実施に支障を来す場合も想定される。