上野大臣会見概要(10月31日)介護保険サービス利用時の2割負担の対象者の拡大の議論について 等

記者:
介護保険サービス利用時の2割負担の対象者の拡大の議論についてお伺いします。6月に閣議決定された骨太の方針では、利用者負担の判断基準の見直し等の給付と負担の見直しに関する課題について、年末までに結論が得られるように検討することとされています。2割負担の対象者の拡大については、これまでも繰り返し議論されてきましたが、負担増につながることもあり、結論は先送りされてきました。介護費用は増え続けており、その財源の一部は、40歳以上の人が支払う介護保険料で賄われています。現役世代の負担軽減が課題となる中、年末まで約2か月となる中、どのような姿勢で検討されるか、お考えをお伺いします。
大臣:
介護保険の負担についてのご質問ですが、介護保険制度の持続可能性を維持する、あるいは、サービスの質を確保するためには、高齢者の皆さんにも能力に応じて負担を求めていくことも必要かと思います。給付と負担のバランスを図るということが重要だと思っていますが、ご指摘の見直しに関しては、利用者負担が2割負担となる所得の判断基準などを含めて、10月27日の介護保険部会において議論いただいたところです。本年6月の骨太の方針においては、給付と負担の見直しに関する課題について、2025年末までに結論が得られるよう検討されているなかで、引き続き、介護保険部会等において、様々なご意見があるのでそれをしっかりと承りながら、年末までに結論が出せるように丁寧に検討を深めていきたいと思います。

参考 介護保険部会 第127回 令和7年10月27日 資料3
現状・課題① 総論
現状・課題
⚫︎介護保険制度は、加齢によリ生じる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となった方が尊厳を保持し、自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う制度として創設され、被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上64歳以下の第2号被保険者(※)としている。
(※)第2号被保険者の範囲については、40歳以上になれば、老化を原因とする疾病による介護ニーズの発生の可能性が高くなるとともに、自らの親も介護を要する状態になる可能性が高くなることから介護保険制度により負担が軽減される等一定の受益があるため、社会的扶養や世代関連体の考え方に立って、定められている。
⚫︎制度創設から24年が経ち、サービス利用者は制度創設時の3.5倍を超え、介護サービスの提供事業所数も着実に増加し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展してきている。
一方、高齢化のに伴い、介護費用の総額も制度創設時から約4.0倍の14.3兆円(令和7年度予算ベース)になるとともに、1号保険料の全国平均は、制度創設時の2.911円(第1期)から6.225円(第9期)に増加しており、今後、更に高齢化が進展することを踏まえると、更なる増加が見込まれる。
⚫︎こうした状況の中で、要介護状態等の軽減・悪化の防止といった制度の理念を堅持し、必要なサービスを提供していくと同時に、給付と負担のバランスを図りつつ、制度の持続可能性を高めていくことが重要な課題となっている。
⚫︎また、全世代型社会保障構築会議で、社会保障全般について総合的な検討が行われ、「全世代型社会保障」は、年齢に関わりなく、全ての国民が、その能力に応じて負担し、支え合うことによって、それぞれの人生のステージに応じて、必要な保障がバランスよく提供されることを目指すもの等「全世代型社会保障の基本理念」が整理された。
⚫︎令和5年12月22日には「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」が閣議決定され、能力に応じた全世代の支え合いとして、利用者負担(2割負担)の範囲の見直し、負担への金融所得、金融資産の反映の在り方等が検討項目として挙げられている。
更に、2040年頃を見据えた、中長期的な課題に対する取組として「人生100年時代を見据えた、持続可能で国民の満足度の高い社会保障制度の構築や世代間・世代内双方での公平性の観点から、負担能力に応じたより公平な負担の在り方の検討」があげられている。
⚫︎本年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」においても、「現役世代が急速に減少し、高齢者数がピークを迎える2040年頃を見据えた中長期的な時間軸も視野に入れ、現役世代の負担軽減しつつ、年齢に関わりなく、能力に応じて負担し、個性を活かして支え合う「全世代型社会保障」の構築が不可欠」とされている。

※財政制度分科会 (令和7年11月11日開催)資料3より
介護保険制度改革の必要性②
利用者負担(2割負担)の見直し①
⚫︎介護保険の利用者負担については、2割・3割負担の導入を進めてきたが、今後も、高齢化による介護費用の増加が見込まれる中で、給付と負担のバランスを確保し、保険料の伸びの抑制を図る観点から、利用者負担の更なる見直しを進めていくことが必要。
⚫︎具体的には、負担能力に応じて、増加する介護費用をより公平に支え合う観点から、2割負担の対象者の拡大を図るべき。
利用者負担(3割負担)の見直し②
⚫︎2割負担の対象者の範囲拡大に当たっては、高齢者世帯の金融資産保有状況も考慮に入れて検討すべき。この点、所得上位30%の高齢者世帯では、平均で1.000万円以上の貯蓄があることや、足もとで、高齢者世帯の平均貯蓄額は増加傾向にあることに留意が必要。
⚫︎過去、2割負担・3割負担導入による介護サービス利用への影響は限定的であり、一定以上の所得・資産のある利用者に対して、2割負担の範囲を一定程度拡大したとしても、介護サービスの利用控えに与える影響は限定的と考えられる。

参考 利用者負担の現行区分
1割負担 下記以外の者
2割負担 単身280万円以上、2人以上346万円以上
(合計所得160万円以上) <所得上位20%>
3割負担 単身340万円以上、2人以上463万円以上
(合計所得220万円以上) <現役並み所得>
※1割負担91.9% 2割負担4.3% 3割負担3.8%