勤務間インターバル制度「労働基準関係法制研究会」報告書 令和7年1月8日 等

働き方改革関連法で導入された時間外・休日労働時間の上限規制は、過重労働を防止する観点から、月を単位として、労使協定によっても超えることのできない上限を設定したものである。一方で、労働者の暮らしと健康を考えると、月を単位とした労働時間管理だけでなく、日々の生活を送る上でのワーク・ライフ・バランスの確保が必要となる。このため、欧州等では、日々の勤務と勤務の間に一定の時間を空けることを義務とする勤務間インターバル制度が設けられている。
我が国では、勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法第2条において、「健康及び福祉を確保するために必要な就業から始業までの時間の設定」として努力義務が課されており、また労働時間等設定改善指針(平成20年厚生労働省告示第108号)においても一定の記述があるが、概念的な内容にとどまり、勤務間インターバルの時間数や対象者、その他導入に当たっての留意事項等は法令上示されていない。
厚生労働省において、勤務間インターバル制度の導入・運用マニュアルを作成し、時間数や対象者等の設定に当たっての留意点を示しているものの、2023年(令和5年)1月時点の導入企業割合は6.0%にとどまっている。他方、制度の導入予定がなく検討もしていない81.5%の企業のうち、51.9%は「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」と回答している点にも留意が必要である。また、既に勤務間インターバルを導入している企業の制度設計や、諸外国の勤務間インターバル制度を見ると、様々な適用除外が設けられた上で制度が運用されている。
このような現状を踏まえ、本研究会としては、抜本的な導入促進と、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化について検討する必要があると考える。企業に勤務間インターバル時間として11時間(※)を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定や、実際に11時間の勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方
・勤務間インターバル時間は11時間よりも短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方
・規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方
等が考えられる。いずれにしても、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられる。勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置については、健康・福祉確保措置の一環として実施される健康観察や面接指導等といった事後措置を目的としたモニタリングではなく、代償休暇など労働からの解放を確保するものであることが望ましいとの考え方や、代替措置によることが可能な回数について各事業場の労使協議で上限を設定するという考え方が示された。
また、義務化の度合いについても、労働基準法による強行的な義務とするという考え方、労働時間等設定改善法等において勤務間インターバルが確保できるよう事業主に配慮を求める規定を設けるという考え方、これらと併せて労働基準法において勤務間インターバル制度を就業規則の記載事項として位置付け行政指導等の手法により普及促進を図るという考え方、現行の抽象的な努力義務規定を具体化するという考え方等が示されており、様々な手段を考慮した検討が必要と考えられる。

※2024年5月独立行政法人労働政策研究・研修機構「諸外国における勤務間インターバル制度等の導入および運用状況に関する調査ーフランス、ドイツ、イギリス、アメリカー」において、勤務間インターバル時間の「11時間」については以下のような説明なされている。
ドイツの制度の歴史をさかのぼると、応用労働科学研究所によれば「職場にいる時間が労働や休憩を含めて12時間程度、通勤に1時間前後かかるとして、労働者の実際の自由時間が11時間程度になる」ことから、こうした連続休息時間が設けられたと説明されている。また、EU労働時間指令については、勤務間インターバル時間を「12時間」とする案も提示されたが、欧州経団連が「インターバルを最低12時間にすると、12時間シフトの2交替制で働く労働現場では、各組の最低限の引継時間がなくなり、現実的な運用が不可能となる」との批判を展開した。こうした批判に配慮したかは不明だが、勤務間インターバルは「11時間」に戻され、その後指令として成立した。

参考 勤務間インターバル制度とは、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設ける制度で、働く人の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために有効なものです。「労働時間等設定改善法」(労働時間の改善に関する特別措置法)が改正され、2019年4月1日より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となっています。(導入企業割合は5.7%、制度を知らない企業割合は14.7%)
目標 2028年までに導入企業15%以上 制度を知らない企業割合5%未満

参考2 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の令和7年の交付申請の受付は、令和7年11月28日までです。(本助成金は予算に制約されるため令和7年11月28日以前に予告なく交付申請の受付を締め切る場合があります。)
交付申請書類等の提出は、所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。

参考3 9時始業の会社で勤務間インターバル時間を「11時間」確保するためには10時には会社を出なければならないことになります。そこから帰宅すると「令和3年社会生活基本調査」通勤・通学時間ランキングによると、全国平均で1時間19分(片道だと約40分)です。1位は神奈川県の1時間40分、2位は千葉県と東京都の1時間35分、4位は埼玉県の1時間34分でした。短いのは山形県と宮崎県の56分です。