上野大臣会見概要(11月11日)70歳以上の医療費の自己負担割合の議論について 等

記者:
5日の財政制度等審議会の分科会では社会保障制度改革の議論が行われ、その中で財務省は70歳以上の医療費の自己負担割合を現役世代と同様に3割にすべきとする案を提示しました。この案に対する厚生労働省としての見解をお聞かせください。また、社会保障審議会医療保険部会では、全世代型社会保障の構築の推進として、高齢者の医療費の自己負担割合の在り方を含む議論が行われています。今後、厚生労働省として高齢者の医療費の応能負担についてどのように進めていきたいとお考えでしょうか。大臣の見解をお聞かせ願います。

大臣:
社会保障制度を持続可能なものとしていくためには、全ての世代で能力に応じて支え合う全世代型社会保障を構築していくという方向性については、厚生労働省としても財政制度等審議会と同様の認識に立っています。ただ、70歳以上の高齢者の窓口負担割合を一律3割とすることについては、一般的に高齢者の方は所得が低く医療費が高い傾向にあるので、大きな負担増になると考えます。必要な受診が抑制されるおそれがあるといった指摘もあります。こうしたことから、高齢者の所得の状況や受診状況等を丁寧に確認していく必要があると考えており、なかなか窓口負担割合を一律3割というのは現実的ではないと考えています。また、高齢者の皆様の負担といいますか、先ほど申し上げた全世代型社会保障は、全世代の皆さんが能力に応じて負担し支え合うということですので、高齢者の皆さんにおいても、能力に応じて負担をどのように求めていくかというのはしっかり議論していくことが必要だと思っています。

※財政制度分科会(令和7年11月5日)資料3より
年齢ではなく能力に応じた負担(総括)
⚫︎75歳以上の1人あたり医療費は現役世代の約4.4倍にのぼり、そのうち8割強が公費および現役世代の支援金によって賄われている。一方で、現役世代から見れば、自ら納める保険料の多くが高齢者医療の支援に充てられる格好となっており、組合健保ではその割合が約47%に達する。
⚫︎2025年度を迎え、「団塊の世代」が全て後期高齢者医療制度に加入する一方、現役世代の人口減少は継続する見込み。これまで「患者自己負担」と「保険料負担」の両面から一定の対応が図られてきたものの、現役世代の保険料軽減という観点からはなお不十分と言わざるをえない。改めて、高齢者の医療の保障を如何に確保していくべきか、早急に検討に着手し、大胆な改革を断行することが求められている。

これまで取り組んできた主な事項
⚫︎70〜74歳の者の窓口負担の引上げ(1割➡︎2割)
・2014年4月以降に70歳に達した者から2割負担(2018年度末で完了)
⚫︎70歳以上の者に係る高額療養費制度の見直し
・2017年8月以降、低所得者を除き、段階的に自己負担の限度額を引上げ
⚫︎療養病床の65歳以上の者の光熱水費の負担見直し
・2017年10月以降、指定難病の者等を除き、段階的に光熱水費の負担を引上げ
⚫︎一定の所得のある後期高齢者(75歳以上)の窓口負担の見直し(1割➡︎2割)
・2025年9月をもって経過措置(負担増を3.000円に抑制)が終了
⚫︎後期高齢者の保険料と現役世代の支援金の負担割合の見直し

今後の主な改革の方向性
⚫︎長寿社会にふさわしい高齢者医療制度の実現
・高齢者医療における患者自己負担の見直し
・後期高齢者医療制度における保険料負担の見直し
・後期高齢者医療制度における「現役並み所得」の判定基準の見直し
・金融所得の勘案
・金融資産等の取扱い