最近の就職・採用活動の実態(令和7年12月26日 就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議)
2017年度の卒業・修了生以降に適用されている現行の就職・採用活動日程ルールは、これまで変更されることなく大学生等が卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降を広報活動開始、6月1日以降を採用活動開始、10月1日以降を内定解禁のタイミングとしているが、近年、実態との乖離が進んでいる。
内閣府による学部4年生及び大学院2年生を対象としたアンケート調査(以下、「学生アンケート」という。)等に基づいて、近年の就職・採用活動に関する日程の実態を俯瞰すると、まず、インターンシップ等(インターンシップと呼称されるものを含む。以下同じ。)には学生の約7割が参加しており、学生の参加は卒業・修了前年度の7月から本格化しているとの結果となっている。そしてインターンシップ等への参加者の約7割は「早期選考の案内」を受けるとともに、約6割はその後の「採用説明会・セミナー」に参加、約5割はその後の採用試験や面接等を受けている。一部の企業では、インターンシップ等の直後から採用を目的とする企業説明会等や採用面接が本格化し、実質的に就職・採用活動が開始されている。
そして多くの大学で3年次の授業が終了する2月以降、最初に採用面接や内々定を受けたと回答した学生が増加し、4月までに累計で学生の約9割が採用面接を受け約7割が内々定を得ており、6月までには累計で約9割の学生が内々定を受けている調査結果となっている。
また、文部科学省による企業を対象としたアンケート調査では、広報活動を2月以前に開始した企業は約6割、採用選考活動を5月以前に開始した企業は約7割、それに伴い5月以前に内々定を出した企業は約6割となっており、いずれのアンケート調査からも、現行の日程ルールと実態との乖離が見てとることができる。
就職・採用活動が年々早期化する背景には、学生側としては、できるだけ早く最初の内々定を確保した上で、勉学等のみならず、本命の就職先への活動を優先させたいとの思いがある。採用側である企業としては、人手不足や労働力人口の減少を背景に、できるだけ早期に優秀な人材にアプローチしようと競い合っている状況があると考えられる。
企業が採用予定数を充足できたとする割合は近年減少し、直近(2025年卒)では3割台にとどまり、その理由としては、「選考応募者が予定より少ない」、「内定辞退が予定より多かった」等があげられている。こうした中、一部の企業が採用活動を早期に開始することにより、ルールを遵守しようとする企業にとって応募者数や内定者数を十分に確保できないという懸念が不公平感につながっていると考えられる。
インターンシップ等が、実態上は採用活動につながっている一方、就職・採用活動日程ルール上、広報活動の開始時期が3月以降とされていることが、選考・採用時期の二分化や過度な早期化を通じて採用活動の実態の分かりにくさや就職活動の開始時期に対する不安を生んでいるとの指摘もある。
例えば、多くの学生や企業が利用している就職情報サイトにおいては、いわゆる就職・採用活動へのエントリーは日程ルールを踏まえて3月以降に設定されているものの、それ事前の広報活動や採用活動等については、いわゆる「プレエントリー」や「インターンシップエントリー」という形でサイトを分けて、学生と企業への情報提供等を行なっている。こうした「プレエントリー」等が採用選考に直結するインターンシップ等の早期開始の端緒として広報・採用活動の早期化や二分化の一要因となっており、企業や学生の双方にとって負担増や分かりにくさにつながっているとも考えられる。
学生アンケートによれば、エントリーシートを最初に提出した時期は、卒業・修了前年度の9月以前が約4割と、広報活動開始の3月の約1割を上回っている。また、企業説明会やセミナー等への参加時期は、卒業・修了前年度の9月以前に参加したと回答する者が約7割と増加する一方、本来は参加のピークとなる広報活動開始の3月に最初に参加した割合は約1割と減少している。
早期化とともに就職・採用活動の長期化の傾向もみられる。学生アンケートでは、就職・採用活動に、9ヵ月間程度以上の期間を要している学生の割合は、令和2年度の約3割から令和6年度では約5割へ増加している。
採用活動が早期化すれば長期化は免れない。それは、学生が志望度の高い企業から内(々)定を取得するまで、就職活動を継続する傾向があるためと考えられる。アンケート調査によれば、学生が、就職活動が終わったと考えるタイミングは「内々定をもらった企業の中から就職先を決定したとき」と「志望度の高い企業から内々定をもらった時」で合わせて約6割となっている一方、現行ルール上は10月1日以降とされている「内定式に出た時・正式な内定通知を受けた時」は約1割弱に過ぎない。複数の内々定を維持したまま、正式な内定または内定式までは、志望する企業の内(々)定を確保するまで就職活動を続け、長期化している傾向がうかがわれる。さらに、採用活動を継続する学生にとって一定の節目となっていた内定式についても、複数の内定式に参加する事例や内定式出席後であっても入社前に内定を辞退する事例がある。
学生が複数の企業からの内(々)定を保持したまま就職活動を続け、就職・採用活動が長期化する一方、それが他の学生の就職機会を妨げ、企業にとっては内定辞退により安定的な採用活動が困難となることが懸念される。内定辞退を抑制するための「オワハラ」や「オヤカク」といった、学生の職業選択の自由を妨げる行為が発生していることに特に留意する必要がある。
こうした早期化・長期化の現状に対し、文部科学省による大学等を対象としたアンケート調査では、採用面接等と授業・ゼミ・研究活動等との時期的な重複に関する学生からの相談が増加傾向にあること、約9割の大学等で学生が就職活動で授業等を欠席している状況が窺える。大学等からは「採用・選考活動が早期化・長期化している状況は、学生の学業・研究活動の時間を奪い、学生の成長を妨げ、ひいては我が国の将来にとっても損失になるのではないか」との強い懸念が示されている。
3 連絡会議としての考え方と結論
2027年度の卒業・修了予定者の就職・採用活動日程については、従来同様の日程ルールを原則とする。
上述のように、インターンシップ等や広報活動を通じて早期選考が行われ、それが就職採用活動の早期化や長期化に至っていること、学生の学業との両立に支障を及ぼしていることを踏まえれば、就職・採用活動日程ルールを遵守するとともに、「オワハラ」等の防止に向けた取組みを関係者に対して改めて要請する。
その上で、11月19日の本連絡会議幹事会において、大学等からの代表者で構成される就職問題懇談会が、学生の学修や成長を第一に考え、就職・採用活動の在り方に関する今後の検討に向けた意見として、就職・採用活動日程については、学生が学業等に専念する時間を十分に確保することができるよう、採用選考活動は学期期間中には行わず、卒業・修了前年度の春休み以降の長期休業期間に行われるものとすべきとの考え方を説明した。また、経済界からは、新卒採用の在り方が大きく変化しており、新卒での採用枠の充足率が下がっていること、現行ルールについて議論することそのものが重要であること、また、中小企業においては内定が本来出るべき10月1日の時点で必要な内定者数を確保できておらず、人材確保に苦しんでいる状況も見られること、現行ルールにおける本質的な支障の所在を議論することが必要であることを指摘した。
以上を踏まえて、2028年度(2029年3月)以降の卒業・修了予定者の就職・採用活動については、上記2の就職・採用活動日程ルールの在り方に関するアンケート結果や、就職・採用活動の実態に加え、学生が学業等に専念し、安心して就職活動に取り組める環境の実現という趣旨も踏まえ、経済界や大学側と十分に議論を行い、実効性のある合意店を丁寧に探りながら見直しの検討を進める。
