労働者の意識変化(若年層)令和7年版 労働経済の分析
⚫︎若年層は継続就業希望が相対的に低く、仕事内容よりも賃金水準を重視する傾向
これまでの分析から、我が国では余暇の相対的な重要性が高まっており、仕事については、生活を支える手段とみなす傾向が強まっていることが確認できた。この傾向は、様々なライフイベントにも左右される可能性があるため、世代間で異なることが考えられる。ここでは、JILPTによるアンケート調査(以下「JILPT調査」という。)の結果をもとに、世代間の働く意識や差異について分析を行う。
まず、継続就業希望について、「現在の企業で長く勤めることが望ましい」又は「転職を通じたキャリア形成が望ましい」という設問に対する回答をみると、全ての年齢階級において「現在の企業で長く勤めることが望ましい」と回答した割合が高かった。しかし、「転職を通じたキャリア形成が望ましい」との回答は、20歳台及び30歳台で他の年齢階級よりも高い割合となっており、若年層ほど同一企業に長くとどまることが望ましいと考えない傾向がみられた。
次に、経験・専門性に関する「ゼネラリストとして、幅広い経験をしたい」又は「スペシャリストとして専門性を高めたい」という設問については、年齢による明確なトレンドはみられなかった。仕事の価値観について、「賃金水準よりも、仕事内容にこだわりたい」又は「仕事内容よりも、賃金水準こだわりたい」という設問に対しては、20歳台及び30歳台で賃金水準を重視する傾向が顕著であり、若年層ほど処遇面への関心が高いことがうかがえる。また、仕事スタイルについて、「質にこだわり、じっくりと仕事をしたい」又は「タイムパフォーマンスにこだわって仕事をしたい」という設問に対しては、他の年齢層と比べると30歳台でタイムパフォーマンスを重視する傾向が確認され、効率性を意識した働き方を志向する傾向がみられる。
また、就業を継続する理由から世代間における働く意識の違いについて確認する。就業を継続している理由のうち自己成長への関心に関係する項目をみると、若年層においては、「教育訓練・研修制度が充実し、スキル向上が可能」「ジョブローテーションがあり、多様な経験がつめる」「自分が希望するポジションへの応募が可能であり、自律的なキャリア形成が可能」といった点を、現在まで就業継続している理由としてあげる割合が他の年代より高い。
企業で就業を継続している理由のうちワーク・ライフ・バランスに関連する項目については、若年層において「残業が少ない、有休を取得しやすい等、働きやすい環境」「フレックスタイムや短時間勤務により、柔軟に働ける」「在宅勤務・テレワークにより、柔軟に働ける」を理由にあげた割合が高い傾向にある。
さらに、若年層が就業継続の判断における自己成長への関心の高さについて、自主的な能力開発の実施状況を年齢階級別にみると、年齢が下がるにつれて「能力開発を行なっていない」とする割合が低くなる傾向がみられており、若年層ほど能力開発を行なっている様子がうかがえる。また、「仕事に関する専門知識(AI・IT以外)」「業務に関する資格所得に必要な知識」等について取り組んでいる割合も、若年層の方が相対的に高くなるような傾向がみられる。
以上の結果から若年層では継続的な雇用を望む意識が相対的に低く、仕事内容よりも賃金水準を重視する傾向があること、自己成長への関心も高いことが明らかとなった。また、30歳代では効率性を重視した働き方を志向する姿勢がみられる。こうした世代別の傾向に対応するためには、人手不足が深刻化する現在の労働市場において、企業は20歳台〜40歳台の若年層及び中堅層の長期的な定着を促す施策として、処遇面の改善に加え、仕事の効率性を高める仕組みづくりや、適切な能力開発の実施を進めていく必要があると考えられる。
